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平成14年の1月、パワービルダーと呼ばれる某分譲住宅会社を退社し、同じく退社した現専務取締役の藤田と一緒に、いつか自分達で土地を購入し、自分達が考えた設計で、自分達が建築した住宅を、自分達の手で売ることが出来たら最高だろうなという当時の二人からすると途方もない夢を持ち平成14 年の3月に設立致しました。
正直つぶれると思いました。
仕事がない。仕事のあてもない。住宅の施工管理しかしてこなかったので営業の仕方もわからない。
資本金の300万は少しずつ目減りしていく。
とにかく夢のみで設立した会社だったので、藤田と晩飯を食いながら夢を語るだけ。
そんな日々の繰り返しでした。
前職場の同僚からお客様を紹介してもらい、網戸の張替え工事を受注しました。
工事金額25.000円
サッシ業者さんへの支払額22.000円
粗利3.000円
初めて会社の帳簿の入金欄に数字を書き入れた事は今でも忘れません。
確か何度も書き直して綺麗に書いた事を覚えています。
前職場の同僚から株式会社吉行産業という総合建設業者を紹介してもらい一戸建て分譲住宅の建築を3棟請け負う事が決まりました。
この仕事と㈱吉行産業との取引が弊社と自分にに大きな変化をもたらしました。
まず驚いたのが㈱吉行産業から弊社への支払方法です。
弊社に一切の負担がかからない方法でお支払いをして頂いた事です。
これは㈱吉行産業がお客様から建築代金を頂く前に弊社に工事代金を支払いしているという事になり、それも住宅3棟分という事は当時の弊社からすると膨大な額になります。
その金額を30歳そこそこの二人しかいないちっぽけな会社に支払う事が当時の自分には理解が出来ませんでした。
その仕事が無事完了した後、たまたま㈱吉行産業の吉行社長と会食する機会が有り、そこでその支払い方法の件を聞いたところ、吉行社長から出た言葉は次のような言葉でした。
「人を信用するという事はリスクを背負うかもしれない、ただ信用された人がその信用に応えるべく動いてくれた時にはその人との関係はより深まりますよね。
私は私の会社が中嶋君の会社に支払う能力が有ったからその仕事を受注して、中嶋君の会社に発注して仕事の対価としてお金をお支払いしただけです。
そして、中嶋君の会社がしっかりとした仕事をしてくれたおかげで、私の会社も利益を得る事が出来ました。
私と私の会社が得た利益はお金だけでは有りませんよ。
中嶋君との信頼関係も得たんです。
私は仕事を通じて人と付き合っていきたいんです。
お金はその為の手段なんですよ。
そして、もし中嶋君が私を騙すような事をしても私は中嶋君を信用した事は後悔しません。
騙された私の人を見る目がなかったんだと自分を戒めるだけです。
なぜなら、騙されるより騙したほうがずっと忘れられないでつらいと思いますよ。
お金は信用と信頼が有る人ならいつでも取り返せるんですよ。
でも人を騙した事実は取り返せないし、一生背負っていかなければならないんですよ。
先輩の社長として一言云わせてもらうとすれば、お金の貰い方、遣い方を考えられる、そして、そのどちらの場合でも相手方を尊敬し、感謝する、お客様からも協力業者からも信頼される社長になって下さい。」
まさに私にとって運命の言葉でした。
弊社を信用してくれる会社がある、中嶋を信用してくれる人がいる。というのは弊社にとって大きな原動力になりました。
それから、私は㈱吉行産業にも弊社にも協力業者にもメリットが有る方法で営業をさせてもらう事になりました。
その方法は、私が㈱吉行産業の施工部長の肩書をお借りして、お客様(建売業者)のところに赴き、分譲予定の敷地図をもらい設計仲間に間取りを考え、建物の仕様、設備、外観、外構を与えられた予算の範囲で企画し、見積もりを提出し、㈱吉行産業で受注し、その仕事を弊社で請負という方法です。
この方法により、㈱吉行産業も弊社も売上、利益を伸ばすことができました。
また協力業者も㈱吉行産業という信頼ある企業の後ろ盾がある安心感から工事代金の回収の心配もなく、存分にものづくりに集中できたのでした。
ものづくりに集中出来るという事は、いいものをつくりあげることができ、いいものをつくりあげていけば自然に受注が増えるという、本当に設立から半年位しか経っていない会社が何で何十棟もの仕事を受注しているのかと色々な所で聞かれました。
また何故、このような方法を取らなければならなかったかというと、弊社には自社で仕事を取ったとしても、お客様より入金される前に協力業者に工事代金を支払うという資力を持ち合わせていなかったからです。
設立から半年程の会社が銀行から融資を得る事は難しいのと、何よりも仕事をしてもらう協力業者に迷惑を掛ける事だけはしてはいけないという吉行社長より教えられた信念が有りました。
ここで、弊社の専務取締役の藤田の名前があまり出ていなかったので紹介します。
藤田の仕事は現場の監督であり、20以上からなる工事工程を現場の工程と予算に合わせて協力業者に工事をお願いし、設計図面と仕様書の通りに建物をつくり上げていく仕事です。
先程、書いたように私が㈱吉行産業の肩書きをお借りしてからの受注は著しく伸び、多い時で4現場位が同時に動いているような状態でした。
そんな状態で有っても絶対に現場においてのお客様からの苦情、近隣の方からの苦情が無かったのは全部藤田が仕切っていてくれていたからです。
朝早くから夜遅くまで、日曜日はお引渡しの立会いでほとんど休みという休みもなく、働いてくれていました。
そして、その藤田を支えてくれていたのが協力業者の方々です。
藤田が現場にどうしても行けない時には大工さんや協力業者が代わりに段取りをしてくれたり、現場の清掃も自発的に行ってくれている、そして職人というプロの目で設計図面通りつくってしまうと納まりが悪い所などを指摘してくれる。
この指摘を素直に聞きいれ、感謝し、現場に活かす。藤田が弊社の経営理念である「思いやり」をもった現場管理をしてくれていたおかげで今日の弊社が有ると云っても過言では有りません。
そして、私が営業して仕事を受注し、藤田と協力業者が力を合わせて完璧に現場をこなすという、スタイルは今現在でも続いております 。
またまた、今度は前職場の後輩から紹介を頂きました。
開発現場を土地単体で購入したお客様が3組いらっしゃって、そのお客様には「私の昔の上司が独立して建築会社を設立していますので紹介します」と、すでに伝えてあります。という連絡がありました。
結果から申しますと3組とも弊社に任せて頂きました。
人生最大の買い物を弊社に任せて頂くという重さに喜びよりも何か恐怖を感じた事を覚えています。
現場は藤田が仕切るから間違いないと思うが、私の打ち合わせ内容に不備はないか、建築中にお客様が不安に感じていることが有るのではないか等、無事お引渡しが完了するまでは正直怖かったことを思い出します。
ただ、最後のお引渡しを終え、お客様家族の喜ぶ顔を見たときは、本当にこの仕事を選んで良かったと思いました。
そして、この経験が今後の弊社の営業活動に大きく関わってきたのです。
初めての融資を申し込んだのは、ある二つの想いが有ったからです。
それは、いつまでも吉行社長を頼っていてはいけない気持ちと、金融機関との取引をする事で設立当初の夢に少しでも近づきたいという思いでした。
この時期から弊社は銀行からの融資を元に自社での請負を始めていきました。
自社での請負の一つの営業手段として考えたのが、
お客様の仕様説明、外観の打ち合わせ、内装の打ち合わせは売主でも仲介業者でもなく、
建築会社である弊社がお客様と直に行うというスタイルを提案したことでした。
このスタイルに踏み切ったのは、先に書きました初めての注文住宅のお引渡しを終えた時のご家族の喜ぶ顔がもう一度見たかった事にほかなりません。
通常、地場の不動産会社の分譲事業は請負っている建築会社の顔が見えにくく、出来上がってしまうと壁の中の施工まではわからない、またどのような建築会社が施工したのかがわからない事が多いと思います。
弊社が表に出る事でお客様の不安が取り除けるのか、不安も有りましたが、結果として頂いた一番多かった言葉は「建築会社の顔が見えて安心しました」という言葉も数多く頂きました。
また、同時に「コンセントの位置まで選べるんですか?」という言葉も多く頂きました。
正直に申し上げますと、建築前のお客様との打ち合わせは大変でした。
何が大変だったかというと弊社のお客様はあくまでも売主の不動産業者でその建物の予算も不動産業者との間で決定している、しかしお客様は一生で一番高い買い物の契約を済まして、建物の打ち合わせに臨んでいる。
お客様は見積書(不動産業者と弊社での取引)を見れないので何がいくらなのか検討もつかないから、外壁のタイルはもう少し多く貼りたい、ここにも窓が欲しい等の要望が、ここに紹介出来ないほどたくさん有り、その要望一つ一つを整理して決められた予算の中でお客様に喜んで頂けるプロデュースを行う事は本当に大変な作業でした。
しかし、「やっぱり私の家を建てた建築屋さんがFESさんで良かった」との言葉を頂いたときは苦労したかいが有ったなぁと喜びもひとしおでした。
(藤田はもっと大変だったと思いますが・・・)
ただ、そうした作業が「あそこの建築屋に頼むと全部やってくれるんだよ」と不動産業者に口コミで広がり、受注を伸ばす事が出来た次第です。
埼玉県三郷市泉の土地区画整理予定地(ピアラシティ)を将来の自社分譲予定地として7区画取得しました。
何故、横浜の会社が埼玉県の土地を?という質問が聞こえてきそうですが、これは弊社の税理士が埼玉方面に顧問先が有り、そのつてで区画整理地前の土地を取得した次第です。
ただ、この土地は区画整理が完了するまであと2年の月日を要する土地でしたのでしばらくは塩漬けの状態でした。
この土地についての詳細は2年後に書きます。
基礎一筋15年の穐山が弊社に入社しました。
大手ハウスメーカーから地場の工務店まで、住宅の基礎を15年間つくり上げてきた基礎の基礎を知りぬいた男が弊社にはいます。
彼は職人さんでした。
職人さんの気持ちがわかる現場監督ということです。
だから、現場の段取りはもちろんの事、建物の監督という初めての分野においてもプロの監督を目指し毎日奮闘していました。
わからない事は理解するまで藤田と協力業者に指導を乞う、教わる事で藤田の時間を遣わせてしまった分は藤田のフォローをする。
その穐山のフォローに藤田は応える。という二人の相乗効果が弊社の建物には活きています。
基礎といえば住宅で一番大事とよく云われる部分です。
本当は住宅に一番大事なものは他に有るのですが、何だと思いますか?
これは、間違いなく"つくり手の気持ち"です。
"思い"です。
弊社は基礎業者をはじめ、大工さん、電気業者、クロス業者、左官業者から納材業者まで20近くの協力業者に仕事を発注しています。
いうまでもなく、彼らはプロです。職人です。
弊社の従業員は協力業者に命令することは有りません。
上からものをいうことも有りません。
弊社は各協力業者がプロの仕事をする為に気持ちのいい現場を提供することに全力を注ぎます。
そして、プロとしての仕事をして頂いた対価でお金をお支払いするのです。
では、気持ちのいい現場とは何でしょうか?
気持ちのいい現場とは、弊社が段取りした日に職人さんが現場に行き、その職人さんの仕事を決められた時間内に精一杯させてあげる現場をつくりあげる事です。
気持ちがよくない現場の例を一つ出しますと大工さんが家の内装工事をしている時に、クロス屋さんが同時に現場に入り、お互いが邪魔になってしまい、大工さんもクロス屋さんも一日分の仕事が出来なくなる事です。
この現象をクロス屋さんへの発注金額に例えると非常にわかりやすくなります。
弊社からクロス屋さんのA号棟の発注金額を30万円とします。
A号棟のクロス屋さんの材料代がそのうち15万円掛かります。
残金は15万円です。
クロス屋さんは3人で2日間でA号棟のクロス工事を完了させる予定でいるとします。
一人頭の日当を2万円とします。2万円×3人×2日間で12万円の経費で会社の利益は3万円と考えられます。
しかし、1日目に大工さんとバッティングしてしまい仕事がはかどらなかったせいで、結局3日掛かってしまいました。
すると、2万円×3人×3日間で18万円になり、このA号棟のクロス工事はトータルで33万円掛かった計算になります。
このままだとクロス屋さんの会社が赤字になってしまうので日当を落とします。
これでは気持ちのいい仕事はできないですよね。
職人さんですから交通費も自分持ちで、もし現場が遠ければ遠い程どんどん日当が減っていきます。
基本的にクロス屋さんは発注者の段取りミスだからといって余計にかかった金額を発注者に請求しません。
なぜならうるさい業者だと思われて次の仕事を出してもらえなくなる可能性が有るからです。
これがこの業界の実態というのは少し大袈裟かもしれませんが、協力業者が弊社に遊びにきた時に私がよく耳にする話です。
「思いやり」のかけらも感じられないこれが実情です。
その「思いやり」のなさが、実は建築費のコストの上昇を招いているのです。
では、弊社はどうなのか?
私と藤田は最初に書いた通りパワービルダーに在籍していました。
それも年間2000棟~3000棟のパワービルダーに在籍していました。
年間2000棟の建築会社の工事単価と年間10棟の建築会社の工事単価が違うのは誰が見ても明らかだと思います。
ホームセンターとコンビニで例えるとわかりやすいかと思います。
弊社の単価は? 限りなくホームセンターに近い単価です。これは独立当初から前職場においてお付き合いしていただいていた各協力業者が、中嶋と藤田の会社だったらと同じ単価で仕事を請けてくれていたからです。
この協力業者の「思いやり」があったからこそ、弊社は今存在しています。
この義理は絶対忘れてはいけないと自分自身に言い聞かせています。
この感謝の意をどこで表すか、と考えたとき思い浮かんだ約束は・・・
・気持ちのいい現場をつくること
・ついでに寄りたくなる会社になること
・職人さん同士が顔なじみになるような現場をつくること
・支払いで絶対に迷惑をかけないこと
・弊社のミスで金銭的な負担を与えてしまった時は必ず支払うこと
・単価交渉は必ず会ってすること
・現場を離れたら仲間として接すること
・下請けと呼ばないこと
・お互いプロとして接し仕事に妥協しないこと
・「思いやり」をもつこと
この約束を守っていれば、職人さんは絶対に最高の仕事をしてくれます。
職人さんが最高の仕事をしてくれて、職人さんとFESが「思いやり」の気持ちで通じあえば、無駄な経費が減り、手直しが減り、監督経費が減り、ひいては弊社がお客様から頂く代金も減らす事が出来ます。
これが本当のコストダウンだと私は思いますし、これを実践できる会社がこの不景気を生き残る事が出来るのだと信じています。
そして、この約束を実践してくれている藤田、穐山をはじめ従業員には本当に感謝をしています。
詳しい内容は当事者のお気持ちを考えると明かせませんが、発端は社外文書の小さな誤植でした。
現場数が増えれば自然に提出する文書も多くなり、その文書のほとんどには弊社の押印や社名が記載されています。
そしてその文書は会社の外に一歩でも出れば非常に重い責任を負う事を教わりました。
この件で弊社は非常に大きな代償を払いましたが、この先会社を継続していく上では大きな進歩をしたと思います。
そしてその体験は弊社と弊社の従業員の間で今も生きています。
弊社の従業員は自分の失敗で誰かに損害を与えてしまった時には絶対に隠しませんし、その損害を埋めた上で、不快な気持ちを与えてしまった分、その誰かにその損害を埋める以上の何かをさせて下さいと、私に報告してきます。
人間ですから必ず失敗はあります。
その失敗のマイナスをプラスに替える行動力と想像力と誠意と熱意がその人間に育つのであれば弊社はその出費は惜しみません。
なぜなら、誰かを喜ばせたり、感動させたり出来た時、その人間は必ず成長しています。
その成長は今後の弊社にその出費以上の利益をもたしてくれる筈と私は信じているからです。
ただ、私に報告した後の従業員のすっきりした顔が許せない時も有ったりしますが・・・
冗談です。
八王子市元八王子2丁目で分譲用地「はちおうじこまち」取得。
この物件の概要についてはHP内の「はちおうじこまち」物語をご覧下さい。